「今からエンジニアなんて、もう遅いんじゃないか」
もしそう思ってこのページを開いたなら、少しだけ私の話を聞いてください。私がITエンジニアになったのは40歳のとき。それまでのキャリアは、接客と事務だけ。正直に言って、遠回りだらけでした。でも今は、フリーランスのITエンジニアとして、正社員時代の約2倍の収入を得られるようになりました。
転職を考え始めたきっかけは、いつまでたっても収入が増えないこと、そして「このままでは老後が不安だ」という焦りでした。特別な才能の話ではありません。ごく普通の、むしろ人より回り道をしてきた人間の記録です。
この記事では、次の3つを正直に書きます。
- 職業訓練で何を学び、何が学べなかったか
- 40歳・未経験の転職活動で実際に何が起きたか(20社応募の結果、面接で聞かれたこと)
- 転職して良かったことと、大変だったこと
CONTENTS目次
エンジニアになる前の私(20代〜30代)
20代:地元広島で、接客業からのスタート
大学卒業後、地元広島の家電量販店に正社員として入社しました。仕事は接客業。朝早く出勤して夜遅くまで働き、休みの日は疲れて一日中寝ているだけの「バタンキュー」生活でした。
「このままでは体を壊す」と思って転職しましたが、次の職場は派遣社員。ボーナスはなく、何年働いても給料は上がりませんでした。車の維持費などで出費はかさみ、貯金もあまり貯まりません。何より、自分に自信が持てませんでした。
30代:資格取得を目指して、事務職へ
そんな中で目標にしたのが、大学時代から勉強していた行政書士の資格でした。書類作成の実務を学ぼうと、一般事務職へ転職。ただ、一般事務の仕事は電話応対などが中心で、スキルアップという意味ではあまり手応えがありませんでした。
そして8年前、法律の実務を学ぶために思い切って上京。都内の法律事務所で働きながら、資格の勉強を続けました。
でも、結果は不合格。何年も勉強してきたのに、合格には届きませんでした。このあたりの経緯はフリーランスのITエンジニアを目指した理由にも書いています。
転機:「このままではダメだ」と気づいた日
年齢は30代後半。資格は取れず、キャリアと呼べるものも見当たらない。さすがに焦りました。
「このままではダメだ。手に職をつけよう」
そこで選んだのが、ハローワークの職業訓練でWebデザインを学ぶことでした。パソコンは好きだったものの、プログラミングは未経験。それでも、自分の作ったページが形になっていくのが楽しくて、夢中で勉強しました。
学習を始めてから転職するまで
職業訓練に入ってから転職するまでの流れを、先に整理しておきます。
| 段階 | やったこと | 振り返って |
|---|---|---|
| 職業訓練の申込・選考 | ハローワークで Webデザイン科に申込。面接を受ける | 倍率はそこまで高くなかった。失業保険の給付を延長できた |
| 訓練中 | HTML / CSS、Webデザインの基礎、ホームページ制作 | JavaScript で最初につまずいた |
| 訓練後 | ポートフォリオサイトを制作。転職活動を開始 | 20社ほど応募して 1社内定 |
| Web制作会社 | 約1年半、ホームページ制作の実務 | 訓練では得られなかった経験が一気に増えた |
| フリーランス | 独立。Webアプリ開発・ホームページ制作 | 収入は正社員時代の約2倍に |
職業訓練を選んだ理由と、選考で聞かれたこと
独学ではなく職業訓練を選んだのは、腰を据えて学ぶ時間と環境がほしかったからです。訓練期間中は失業保険の給付を延長できたので、収入が途切れる不安を抑えながら学習に集中できました。
選考の面接では、PCの基本的な知識を問われたのと、「Webデザインについて何か予習しているか」と聞かれました。私は少し予習していたので、そのことを答えました。倍率はそこまで高くなかったと思います。ただし、職業訓練は誰でも受けられるわけではありません。要件や選考については基本のHTML、CSSはどこで習うのが良い?で触れています。
訓練で学んだこと・学べなかったこと
学んだのは、Webデザインの基礎知識と、ホームページを一人で作れるようになるまでの一連の流れです。気づけば、自分でホームページを作れるようになっていました。
一方で、学べなかったこともあります。他の人との共同作業です。実務に入ると、チームで一つのサイトを作る、お客様とやりとりしながら修正を重ねる、といった場面がすぐにやってきます。ここは訓練だけでは身につかず、入社後に実務の中で覚えていきました。
いちばんつまずいたことと、どう乗り越えたか
いちばんつまずいたのは JavaScript でした。HTML や CSS は「書いたとおりに見た目が変わる」ので分かりやすいのですが、JavaScript は最初、何をやっているのかまったく理解できませんでした。
そのとき私がやったのは、「分からないところで止まらず、とりあえずカリキュラムを最後まで終えることを優先する」ことでした。一度全体を通してから戻ってくると、最初は意味不明だったコードが少しずつ読めるようになっていきます。分からないところで立ち止まって学習そのものが止まるのが、いちばんもったいないと今でも思います。学習を続けるコツはコツコツ勉強を続けるコツにまとめています。
40歳・未経験の転職活動で実際にあったこと
職業訓練を終え、ポートフォリオを用意して転職活動を始めました。結果から書きます。
| 応募数 | 書類選考で不採用 | 内定 |
|---|---|---|
| 約20社 | ほぼすべて | 1社(都内のWeb制作会社) |
お祈りメールは山ほど受け取りました。それでも応募を続け、都内のWeb制作会社から内定をもらうことができました。
面接で年齢について聞かれたか
これは意外に思われるかもしれませんが、面接で年齢について直接聞かれることはありませんでした。年齢がハードルになったのは、面接ではなく書類選考です。40歳目前で実務経験がない、という2点が重なると、書類の段階で落とされることがほとんどでした。
裏を返せば、面接まで進めば年齢そのものは話題になりにくい、ということでもあります。だから私は、書類で落とされても気にしすぎず、面接に進める会社を探し続けました。
内定の決め手になったもの
内定をくれた会社に後から聞いたところ、決め手は「スキルが足りなくても、自分で調べて解決しようとする意欲」だったそうです。未経験者に即戦力を求める会社はありません。見られていたのは、スキルの量ではなく、分からないことにどう向き合うかという姿勢でした。
入社後の約1年半は、実務でホームページ制作の経験を積みました。実務のスピード感、お客様とのやりとり、チームでの開発。職業訓練だけでは得られない経験が、一気に増えていきました。
前職の経験が意外と役立った
遠回りだったと思っていた経験は、無駄ではありませんでした。
接客業で身についたコミュニケーション力のおかげで、初対面のお客様とも自然に話ができ、相手が本当に求めていることを理解できました。エンジニアの仕事は、コードを書く前に「何を作るべきか」を聞き出すところから始まります。ここで接客の経験がそのまま活きました。
事務職で学んだ進捗管理も役に立ちました。複数の案件を抱えたとき、優先順位をつけて段取りよく進められたのは、事務の仕事で身についた習慣のおかげです。
「年齢は関係ない」とまでは言いません。書類選考では確かに不利でした。ただ、それまでの社会人経験は、エンジニアになってから思っていた以上に武器になりました。
転職して変わったこと(良いことも、大変なことも)
良かったこと
実務経験を積んだ後、フリーランスのITエンジニアとして独立しました。収入は正社員時代の約2倍。働く場所や時間の自由度も上がりました。
いちばん大きな変化は、心に余裕ができたことです。あの頃「バタンキュー」で終わっていた休日に、趣味の時間や、自分の未来のための勉強ができるようになりました。この働き方については理想のフリーランスの働き方に詳しく書いています。
正直に大変だったこと
良いことばかりではありません。フリーランスになった当初は、案件が終わると次が続かない時期があり、収入の不安定さを身をもって感じました。
そして、学び続ける必要があることです。最近は開発でAIを使うことが当たり前になりました。AIのおかげで以前より難しいことに挑戦できるようになった一方、AIを使いこなすには基礎の理解がますます重要だと感じています。40歳でエンジニアになった私ですが、学びに終わりはありません。
これから目指す人へ:年齢より大事だったこと
振り返ると、私の場合に効いたのは次の3つでした。
- 学ぶ環境に入ったこと。独学で手応えがなかった私は、職業訓練という環境に飛び込んで初めて前に進めました
- 分からないところで止まらなかったこと。JavaScript で理解できなくても、まず最後まで終えた
- 断られても応募を続けたこと。書類でほぼ落ちても、面接に進める1社に出会えた
「40歳でも誰でも転職できる」とは言えません。私にできたのは、自分の状況を認めて、学ぶ環境を選び、続けることだけでした。学び方には独学・職業訓練・スクールなどの選択肢があり、それぞれ向き不向きがあります。私の場合は職業訓練でしたが、今はもっと選択肢が増えています。
まとめ:遅すぎるスタートなんてない
私がエンジニアになるまでにやったことは、シンプルです。
- 「このままではダメだ」と認めたこと
- 学ぶ環境に飛び込んだこと(私の場合は職業訓練)
- 分からなくても、まずカリキュラムを最後まで終えたこと
- 断られても応募し続けたこと(約20社)
- 実務経験を1年半、腰を据えて積んだこと
40歳からでも、人生は変えられました。むしろ、これまでの社会人経験があるからこそ、活かせるものはたくさんあります。
「もう遅いかも」と迷っている時間が、いちばんもったいない。次に人生を変えるのは、あなたの番です。



