AWSの学習を始めると、まず頭に浮かぶのが「今 WordPress で書いているこのブログも AWS に載せたほうがいいのでは?」という疑問です。私もそうでした。

この記事では、WordPress のブログを AWS で動かす方法を 4 つに整理して、費用・投稿のしやすさ・保守の手間・学べる AWS サービスで比べます。そして最後に、比べた上で私が今はブログを AWS に移さず、レンタルサーバーに残すと決めた理由を書きます。「AWS を学ぶ=全部 AWS に移す」ではない、という話です。

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CONTENTS目次
  1. 4 つの方法を一覧で比較
  2. ① Lightsail に WordPress をそのまま載せる
  3. ② WordPress を静的化して S3+CloudFront で配信する
  4. ③ ヘッドレス CMS(microCMS)+Astro を Amplify Hosting で公開する
  5. ④ Markdown+Astro/Next.js を Amplify Hosting で公開する
  6. 独自ドメインとメールはどうなるか
  7. 私の結論:今は Xserver に残す
  8. 試験のツボ
  9. まとめ

4 つの方法を一覧で比較

WordPress のブログを AWS で動かす、と一口に言っても「WordPress をそのまま動かす」のか「書く道具だけ残して配信を変える」のか「WordPress をやめる」のかで、まったく別の話になります。

方法 記事の書き方 月額の目安 保守の手間 学べる AWS サービス 向いている人
① Lightsail+WordPress 今と同じ WordPress の管理画面 5〜7 USD(約 800〜1,100 円) 大。OS・PHP・WordPress の更新とバックアップを自分で Lightsail(EC2 の簡易版)、DNS 書き心地を変えたくない人
② WordPress を静的化して S3+CloudFront WordPress で書いて HTML に書き出す(手元の環境でも可) 100 円前後 中。書き出しと転送の手順が毎回入る S3、CloudFront、ACM、Route 53 安く・速く・安全に配信したい人
③ microCMS+Astro+Amplify Hosting microCMS の管理画面(ブラウザ) 無料枠内なら 0〜数百円 小。サーバーの保守なし。デザインはコードで管理 Amplify Hosting、Route 53、(裏で S3・CloudFront) React・TypeScript が書けて、書きやすさと自由さを両立したい人
④ Markdown+Astro/Next.js+Amplify Hosting Markdown を GitHub に push 無料枠内なら 0〜数百円 小。③と同じ ③と同じ エディタで書くのが苦にならない人

月額の目安は、個人ブログ程度のアクセス量を想定しています。順に見ていきます。

WordPressのブログをAWSで動かす4つの方法を、それぞれの構成の流れで並べて比べた図
4つの方法の全体像。下に行くほど自分で管理する範囲が小さくなる

① Lightsail に WordPress をそのまま載せる

Lightsail(ライトセイル)は、EC2 を簡単にしたサービスです。WordPress 入りのサーバーがワンクリックで立ち上がり、料金も月額固定なので、AWS の中ではレンタルサーバーに一番近い感覚で使えます。

料金は Linux の最小プランが 5 USD/月(メモリ 0.5GB)、次が 7 USD/月(メモリ 1GB)。WordPress を安定して動かすなら 1GB のプランが現実的です。どちらも最初の 3 か月は無料で使えます。

いちばんの注意点は、保守が全部自分の仕事になることです。レンタルサーバーでは会社がやってくれていた OS や PHP の更新、バックアップ、セキュリティ対策を、自分で行います。WordPress の管理画面がそのまま使えるのは楽ですが、「サーバーを 1 台持つ」責任がついてきます。

学べる AWS の範囲は狭めです。Lightsail は AWS の中でも独立した作りで、VPC や IAM の設計に触れる機会がほとんどありません。「AWS の実務力をつける」目的には、少し物足りないと感じました。

② WordPress を静的化して S3+CloudFront で配信する

WordPress を「書く道具」として手元やサーバーに残し、公開するのは書き出した HTML だけ、という方法です。書き出しには静的化プラグインを使います。

配信側は、AWS で静的サイトを公開する基本の構成そのものです。

  • S3:HTML・CSS・画像を置く
  • CloudFront:世界中の拠点から高速に配信し、HTTPS をかける
  • ACM:SSL 証明書を無料で発行する
  • Route 53:独自ドメインを結びつける(今の DNS をそのまま使う手もあります)
WordPressで書いた記事を静的HTMLに書き出し、S3に置いてCloudFrontで配信する構成図
② 静的化してS3+CloudFrontで配信する構成

費用はとても安く済みます。S3 の保存料は個人ブログの容量なら数十円、CloudFront は料金ページに月額 0 USD の無料プラン(データ転送 100GB・100 万リクエストまで)が用意されています。Route 53 のホストゾーンは 1 つ 0.50 USD/月。合わせても月 100 円前後です。

公開したものは静的な HTML だけなので、WordPress 本体がインターネットにさらされず、セキュリティ面でも強くなります。一方で、コメント機能やお問い合わせフォームのような動的な部分は別の仕組みが必要になり、記事を書くたびに「書き出して転送する」手順が入ります。

この構成は、第 1 回で「最初に作るもの」として挙げた構成と同じです。ブログの引っ越しとは別に、AWS 学習の最初の一歩として組んでみる価値があります。

③ ヘッドレス CMS(microCMS)+Astro を Amplify Hosting で公開する

WordPress をやめて、記事の管理を microCMS のようなヘッドレス CMS に、見た目の部分を Astro や Next.js に分ける方法です。ブラウザの管理画面で記事を書く点は WordPress と同じで、公開すると自動でサイトが再ビルドされます。

Amplify Hosting は、GitHub のリポジトリをつなぐだけで、ビルドから配信までを自動でやってくれるサービスです。裏側では S3 や CloudFront にあたる仕組みが動いていますが、自分で設定する必要はありません。

microCMSで書いた記事を、GitHubのAstroコードと合わせてAmplify Hostingが自動でビルド・配信する構成図
③ microCMS+Astro+Amplify Hosting の構成

費用

Amplify Hosting は、最初の 12 か月は無料枠(ビルド 1,000 分/月、ストレージ 5GB、データ転送 15GB/月、50 万リクエスト/月)があります。その後はビルド 1 分 0.01 USD、ストレージ 0.023 USD/GB/月、データ転送 0.15 USD/GB。個人ブログなら月に数百円を超えることはまずありません。

microCMS は Hobby プランが 0 円でクレジットカードも不要です。API は 5 個まで、メンバー 3 人まで、コンテンツ 10,000 件、データ転送 20GB/月。ブログなら「記事」「カテゴリ」「タグ」「プロフィール」程度で API は 5 個に収まります。

気をつける点

  • データ転送量:Hobby の 20GB/月を超えると API が止まります。ただし Astro で静的ビルドすれば microCMS へのアクセスはビルド時だけ。記事中の画像を microCMS の URL のまま表示すると閲覧のたびに転送量を使うので、アクセスが増えたらビルド時に画像を取り込む設計にします
  • 使える機能:CSV 出力やファイルのアップロードなどは Team プラン(4,900 円/月〜)から。PDF の添付は S3 に置いてリンクする形にします
  • 既存記事の移行:WordPress の記事を microCMS に入れ直す作業が発生します。記事数が多いほど重い

React・TypeScript で開発している人には、いちばん相性のよい方法です。デザインの自由度が高く、サーバーの保守がなく、学んだことがそのまま Web アプリ開発に活きます。

④ Markdown+Astro/Next.js を Amplify Hosting で公開する

③から microCMS を外し、記事を Markdown ファイルとして GitHub に置く方法です。費用は③と同じで、CMS の制限もなくなります。

ただし「記事を書く=エディタで Markdown を書いて push する」になるので、ブラウザの管理画面で書きたい人には向きません。画像の管理も自分で行います。開発者がメモを公開する用途には最適ですが、「書くことに集中したい」ブログには③のほうが楽だと思います。

独自ドメインとメールはどうなるか

どの方法でも、今の独自ドメインはそのまま使えます。やり方は 2 つです。

方法 やること 向いている場合
今の会社で DNS 管理を続ける 今の管理画面で、DNS レコードを AWS 側(CloudFront や Amplify)に向ける メールもその会社で使っている。変更を最小にしたい
DNS だけ Route 53 に移す Route 53 でホストゾーンを作り、ドメイン会社でネームサーバーを変更する AWS 側で完結させたい。www なしのドメインも AWS の画面で設定したい

移行でいちばん事故が起きやすいのはメールです。そのドメインでメールを使っているなら、MX レコードや SPF・DKIM・DMARC の設定を Route 53 に写してからネームサーバーを切り替えないと、メールが届かなくなります。サイトは仮の URL で完成させ、最後に DNS を切り替え、しばらく旧環境を残しておくのが安全です。記事の URL が変わる場合は、旧 URL からの転送(リダイレクト)も用意します。

私の結論:今は Xserver に残す

ここまで比べた上で、私はこのブログを当面は AWS に移さず、Xserver の WordPress のまま運用すると決めました。理由は 3 つです。

理由 1:単価に効くのは「アプリを AWS で動かした実績」

私が AWS を学ぶ目的は、Web アプリケーションを AWS で設計・運用できるようになり、フリーランスとしての単価を上げることです。評価されるのは、データベース・認証・コンテナ・インフラのコード化といったアプリ側の実績であって、WordPress を別のサーバーに載せ替えたことではありません。実績づくりは、実際に運用している Web アプリの AWS 移行で進めることにしました。

理由 2:ブログの移行作業の大半は、AWS ともアプリ開発とも関係が薄い

実際に移行計画を立ててみると、作業の中身はメールの移行、ネームサーバーの委任、DMARC の設定、セキュリティプラグインの設定の引き継ぎ、といったものがほとんどでした。やればできますが、そこで得られるのは「引っ越しの経験」で、学びたい AWS の設計力ではありませんでした。

理由 3:今のレンタルサーバーで困っていない

表示速度にも安定性にも問題がなく、月額も個人で負担できる範囲です。移す理由が「実績づくり」しかないなら、その実績はアプリ側で作ればよい、という結論になりました。

「AWS を学ぶなら全部 AWS に移すべき」と考えがちですが、何を AWS に載せるかは、目的から逆算して決めるのがよいと思います。ブログは書くことが目的なので、書きやすい場所に置いておく。それも一つの設計判断です。

目的から逆算して、Webアプリの移行はやり、ブログの移行は今はやらないと判断した理由を比べた図
何をAWSに載せるかは、目的から逆算して決める

それでも移すなら、私は③を選ぶ

将来ブログを移すことになったら、私は③の microCMS+Astro+Amplify Hosting を選びます。ブラウザから投稿できて、デザインは自由、サーバーの保守がなく、普段使っている React・TypeScript の延長で作れるからです。手順は「microCMS に API を作る → Astro で記事一覧と詳細ページを作る → GitHub に push → Amplify Hosting でつなぐ → 動作確認後に DNS を切り替える」の流れになります。

試験のツボ

AWS 認定試験(Cloud Practitioner / Solutions Architect – Associate)の観点で、この記事に出てきたサービスの押さえどころです。

  • Lightsail と EC2 の違い:Lightsail は月額固定・簡単な構成向け。細かいネットワークやスケーリングの制御が必要なら EC2。試験では「最小限の管理で WordPress を動かしたい」なら Lightsail が答えになりやすい
  • S3 の静的ウェブサイトホスティング:S3 単体でも静的サイトを公開できるが、HTTPS と独自ドメインを使うなら CloudFront を前に置く。S3 を公開設定にせず、CloudFront からだけ読めるようにする仕組み(OAC)が推奨
  • CloudFront の役割:エッジロケーションからのキャッシュ配信で、遅延の削減とオリジンの負荷軽減。ACM の証明書をバージニア北部(us-east-1)で作る必要がある
  • Route 53 のホストゾーン:ドメインの DNS レコードをまとめたもの。ドメインの「登録」と「DNS 管理」は別の機能で、DNS 管理だけ Route 53 に移すことができる
  • マネージドサービスの考え方:Amplify Hosting や microCMS のように「運用を任せる」ほど自分の責任範囲は減る。責任共有モデルで、どこまでが自分の責任かを説明できるようにしておく

まとめ

  • WordPress のブログを AWS で動かす方法は 4 つ。「そのまま載せる(Lightsail)」「静的化して配信(S3+CloudFront)」「ヘッドレス CMS に移る(microCMS+Astro+Amplify)」「Markdown で書く(Astro/Next.js+Amplify)」
  • 費用はどれも月数百円以下に収まるが、保守の手間と学べる範囲が大きく違う
  • 独自ドメインは引き継げる。事故が起きやすいのはメールの DNS 設定
  • 私は、AWS の実績はアプリ側で作ると決め、ブログは今のレンタルサーバーに残した。何を AWS に載せるかは目的から逆算して決める

次回は、予告どおり AWS アカウントの作成と初期設定(MFA・管理者ユーザー・Budgets)、そして練習用の小さなサイトを S3+CloudFront で公開するまでを、実際にやった記録として書きます。このブログやホームページを移すわけではなく、学習用のサブドメインで試します。

参考にした公式情報(2026 年 10 月時点):